Petite Workshop 2015 (Hokkaido, Japan, September 5th-7th 2015)体験記 (Writer:木村勇太)
2015年9月5日~7日にかけて、北海道ニセコ町で開催された、Petite Workshop 2015 International Workshop on Defect Chemistry for Future Solid State Ionicsに参加させていただきました。この学会は、通常の学会とは異なり、学会の発表や、その存在自体も非公開で、コアメンバーおよび彼らが推薦する研究者のみが参加する、「秘密結社」的なシンポジウムです。そのため参加者数自体は多くはないのですが、そこに参加する方々のお名前は豪華そのもの。世界各国の固体イオニクス分野の大御所が集い、まさにオールスターの様相を呈していました。私も今回、そのお歴々に交じって発表…という訳にはいかず、学会のお手伝いのみでの参加となりました。ちなみに、本学会の名称「Petite workshop」の「Petite」は、通常は「プチ(ペティート)」と発音しますが、本学会では、「ペタイト」と読みます。これには、無機材料の研究者らしいユーモアが込められています。鉱石の名称には、ラテン語の接尾語ite(=「石」という意味)がつくことが多く、そのため、名称の語尾が「~ナイト、~ライト、~タイト」となっている鉱物が多く存在します。「Petite」に関しても、無機材料の研究者らしく、末尾の「ite」を、「石」を表すラテン語の接尾語と解釈して、「ペタイト」という空想の鉱物かのように呼んでいるのだそうです。
話が脱線してしまいました。学会の報告に戻ります。1日目は、夕方からヒルトンニセコビレッジのレストランで、welcome partyが開催され、バフェ形式の夕食を楽しみました。私のテーブルには、ドイツから来たポスドクの研究者と修士課程の学生、中国、韓国のポスドクの研究者、東北大学の博士課程の学生が一緒に座りました。お互い歳が近いこともあり、研究の話や、各国の文化の違いなどについてフランクに話し合って、盛り上がりました。
1日目はwelcome partyのみで解散し、2日目から研究発表が始まりました。私は受け付けの仕事と写真撮影をしながら発表を聞かせていただきましたが、やはりどの発表もかなりハイレベル。そして飛び交う質問も本質を鋭くつくものが多く、改めて本学会のレベルの高さに驚きました。この日は、研究発表はお昼までで終了し、午後からはエクスカージョンとして、希望者を募ってニセコアンヌプリ(標高1,308m)へハイキングに行きました。実は、このハイキングも本学会の伝統らしく、これまでにも色々な山を制覇してきたそうです。ホテルからタクシーで15分ほど走り、アンヌプリの麓まで行き、さらにゴンドラで1,000m付近まで登り、そこから頂上を目標にハイキングを開始しました。参加者の中でも最年長の、あの大御所の先生(「秘密結社」的シンポジウムなので、名前は伏せさせていただきます。)も、ハイキングに参加されていたのにまず驚きました。やはりその道を極める方の体力と精神力は、常人とは異なるのだなと思いました。しかしながら、「ハイキング」といいつつも、道もぬかるんでいて、中々険しい行程。参加者にもご高齢の方が多く、途中で引き返す方もちらほらとでてきました。しかしその中でトップを行くのは、韓国からいらっしゃったあの先生(「秘密結社」的シンポ…以下略)。もう退官も間近の年齢というのに、信じられないスピードで登っていきます。私もぐんぐん離されて、あっという間に見えなくなってしまいました。その先生が頂上についてから何分たったのでしょうか、私もなんとか頂上にたどり着きました。登っている途中は大変ですが、頂上の景色は素晴らしいものです。頂上にふく涼しい風を浴びながら、しばし景色を楽しんでいると他の参加者の方々も続々と頂上までやってきました。やはり皆さん、すごい体力です。そこで全員で写真を撮り、下山しましたが、この下山がまた大変でした。道がぬかるんでいることもあり、転倒者が続出。しかし転んでも皆さんただでは起きません。ある先生などは、滑って転んだ際に「大丈夫ですか」と声をかけようとすると、「いや、『ペタイト』を見つけたから拾おうとしたんだよね」と余裕のジョークをかましていたそうです。やはり大御所、転んでもただでは起きません。そのあとはホテルに戻って、温泉に浸かって汗を流しました。ハイキングの後の温泉、気持ちがいいですね。そのあとは夕食。皆さんとても陽気で、食事の合間に、参加者の皆さんのそれぞれの国の歌を披露していました。その日はハイキングの疲れとお酒も手伝って、早々と寝床につきました。
3日目は、朝8時から研究発表が始まりました。この日はセッションのチェアをいくつかやらせていただきました。先ほど大御所の先生方が多く参加していると書きましたが、この日はその中に交じって、学生やポスドクなどの若手研究者も発表をしていました。その中に、数年前の日韓学生シンポジウムで知り合った友人もいました。その友人は、三元系酸化物の速度論的分解について、線形非平衡熱力学の観点から考察した研究成果について発表されていましたが、その研究のハイレベルさ、しっかりと準備されたプレゼン、堂々とした質疑応答での受け答えに、とても感銘を受けました。やはり同世代の研究者の活躍する姿には、とても刺激を受けます。自分ももっと研究に精を出さなければならないし、勉強しなければならないと思いました。この日は19時まで研究発表が行われ、闊達な議論が交わされました。そしてそのあとは、野外でBBQを行いました。北海道のBBQといえば、ジンギスカンですね。僕もたっぷりと堪能させていただきました。BBQを楽しんでいると、なんとどこからともなくキタキツネがやってきました。このあたりも、北海道らしくていいですね。さすがに近づくのは怖かったですが、少し離れたところから数枚写真を撮りました。BBQの最後に、次回のPetite workshopの開催地とオーガナイザーが発表され、お開きとなりました。
今回も大変刺激の多い、とても有意義な学会参加となりました。最後までお読みくださり、ありがとうございました。
木村勇太
学会会場のヒルトンニセコヴィレッジ
アンヌプリ頂上からの眺め